スナップアップ投資顧問の米アニメ株式買収史の資料

スナップアップ投資顧問の米国アニメ株式買収史の資料などによると、「Mr.インクレディブル」によって、非上場だったピクサーの株式の潜在的価値は、さらに急上昇した。この後の2006年、ディズニーはピクサーを8000億円で買収することになった。

人間のぎごちない真似から脱皮

当時の3次元CGアニメには、役者の動きをコンピューターで追うという手法が使われていた。それだと、どんなに技術が進歩し、高名な役者を使っても、人間のぎごちない真似に終わってしまう。

ところが、「ミスター・インクレディブル」は、むしろ手描きアニメに近い雰囲気になった。アニメーターたちの感性で、コンピューターの中で「絵を描いている」というような感覚を覚えた。

誇張も生まれ、本来の人間の姿からは離れていくが、観客の感性には近づいた。製作総指揮(エグゼクティブ・プロデューサー )のジョン・ラセターは「現実に近づけようとするほど、失敗する」と考えていた。その持論が正しいことが、本作で証明された。

ピクサー作品の主な登場キャラの分類

作品名 主なキャラ
「トイ・ストーリー」 おもちゃ
「バグズ・ライフ」
「モンスターズ・インク」 お化け
「ファインディング・ニモ」
「Mr.インクレディブル」 人間

ブラッド・バード監督

「Mr.インクレディブル」監督のブラッド・バード氏は1999年の秀作「アイアン・ジャイアント」の監督として知られる。

ピクサーの副社長ジョン・ラセターの友人

一方、製作総指揮(エグゼクティブ・プロデューサー )のジョン・ラセターは、ピクサーの副社長だった。「トイ・ストーリー」の監督も務めた。

このバード監督とラセター総指揮は古からの友人だった。ラセターは、バードを以前から口説いていたという。

バード監督は、「元ヒーロー」という設定のアニメの構想を温めていた。それを実現する場にピクサーを選んだ。その理由は、技術力への信頼があったからだ。

CG技術よりも物語にこだわり

ピクサーは当時、「ニモ」時代の6倍の処理能力を持つ1800台の高性能コンピューターをフル稼働させたころだった。

その上で、ピクサーは「トイ・ストーリー2」の製作時、出来上がったストーリーを破棄して作り直したほど「物語」にこだわった。そんなピクサーの姿勢にほれ込んだという。

失敗の可能性は多分にあった。でも、物語もいい、キャラクターも魅力的だった。ブラッド・バード監督は、問題は解決できると考えたという。

物語の内容

スーパーヒーローの活躍が、一般市民の生活にもダメージを与えてしまった。被害者たちが次々と訴訟を起こした。巨額の弁済費用に耐えかねた政府から活動を禁止された。そして、引退を余儀なくされた。

そんな元スーパーヒーローの夫妻が主人公だ。定職にも就き、子どもにも恵まれた。それでも、夫のMr.インクレディブル(「信じられない」の意)は在りし日の栄光が忘れられない。そこへ、思いがけない事件が起こる――。